生産記録から見つける適切な飼養管理：繁殖母豚の廃用基準における研究事例

摘要

近年，欧米諸国では種豚の育種改良に伴い，繁殖生産性 が飛躍的に向上している。オランダやデンマークでは，年間1母豚当たり離乳子豚数が30頭を超えている農場も珍 しくない。これらは，一腹当たり総産子数の向上もさるこ とながら，数値に基づいた飼養管理の改善が推し進められ たことが関連している。一方.日本では，年々農場数が減 少傾向にあり，最新の畜産統計では全国の農場数が5,270 戸となった11。この農場数の減少に伴い，一農場当たりの 飼養頭数は増加傾向にある。しかしながら，欧米諸国と比 較して，国内における生産性の上昇は緩やかである。さら に.日本は飼料原料を国外からの輸入に頼っているため， 生産コストがどうしても高くなつてしまう。今後は，海外からの輸入豚肉の増加や飼料代の高騰，豚価の下落が予想 され，その影響により，国内の養豚農家数がさらに減少す る可能性がある。しかし，世界の人口は年々増加傾向にあ り，国際的な食糧問題への対応として，国内での食肉の安 定供給を確立する必要がある。そのためには生産性の向上 が急務であり，低コストかつ生産効率を高めるための科学 的知見を得る必要がある。