牛た饲うため床に必要なこと

摘要

筆者は一度だけ牛に足を踏まれた経験がある。 幸いにも爪先に鉄板の入った安全靴を履いていたため大事には至らなかったが，しばらくの間右足の甲は紫色だった。 乳牛は，私たちの足とそれほど変わらない面積の蹄で600～800kgの体を支えている。 そのため，牛が床に与える荷重と圧力は相当なものである。 逆の見方をすれば，その反力を牛は常に受けているのである。 床は常に乳牛と接触しているという意味から重要な環境であり，飼養方法と関連して床条件が牛に与える影響も大きい。 タイストールとフリーストールとで外傷と疾病の発生についての調査が行われ，飛節と前膝を中心とする外傷はタイストールに多く，蹄病はフリーストールに多いという結果が得られている。 タイストールのほうが動作に対する制約が多く，フリーストールでは蹄が湿っている時間が長いことがそれらの理由であろう。 本稿では，牛床，通路，パドックのそれぞれに要求される条件について，筆者らが行った運動力学的分析手法を用いた研究，および関連する研究結果を通じて解説してみたい。