舟状骨（とう骨）症候群を最近発症し，×線所見では異常が認められない馬におけるMRI（核磁気共鳴画像）検査所見

摘要

舟状骨症候群は，慢性進行性両側性の前肢の舟状骨（とう骨）およびその支持軟部組織の障害であり，運動競技馬（アスレティツクホース）の前肢披行のよく認められる原因である。しかし，この症候群は，その発症がよく認められるにもかかわらず，舟状骨変性の発生原因と病理発生は不明である。この症候群の痺痛と舟状骨変性は指動脈に起因する虚血性壊死の結果であるとする血管障害説が提案されている。また，組織病理学的観察に基づいてバイオメカニカル説が提案されており，舟状骨に対して深指屈腱の慢性持続性圧迫を引き起こす異常なバイオメカニカルな力が，舟状骨の再形成過程を刺激するというものである。舟状骨症候群は骨関節炎にも関係があると考えられているが，これは脛患関節のヒアリン軟骨と軟骨下骨で観察されている異常と類似しているからである。