飼料への農薬残留に関する規制について

摘要

農薬の主目的は，農作物に被害を与える病虫害を防除することであるが，多くの農薬は，家畜や人間に対しても毒性を示す。 従って，農作物の病虫害防除のために使用した農薬が農作物に残留して，その農作物が飼料として家畜に給与された場合には，家畜の健康を損ない生産性の低下を引き起こしたり，有害畜産物が生産される可能性がある。 畜産分野で関与している農薬は，大別すると飼料用穀物等に散布された農薬を家畜等が摂取して畜産物を汚染する場合と，畜舎等の衛生環境を維持するために散布もしくは燥蒸に用いられた農薬が家畜等を経由して畜産物を汚染する場合が考えられるが，後者は非常にまれなケースと考えられるため，今回は前者の問題に絞って述べたい。 飼料用穀物等に散布される農薬としては，殺虫剤，殺菌剤，殺ダニ剤，除草剤等がある。 このうち飼料を通じて畜産物に残留しやすいものは，殺虫剤および除草剤である。