九重改作単調な模様に動きを引き出す役枝操作

摘要

昭和30年代に興つたッ房プムを瑞祥とともに牽引した、那雍菜松系八ッ房種「九重」。おう盛な芽吹きと太りの良さは瑞祥を凌ぐともされ、台接ぎによって盛hに殖やされた。おそらくこの素材もその時代に作出されたものと思われ、足元に台接ぎの痕跡を確認することができる。しかし接ぎ痕に不自然さはなく、盆栽に熟知した経験豊富な技術者によつて計画的に培養されたことが見て取れる。現状でも充分に鑑賞できる状態にあるが、藤原氏は一つの問題点を見出していた。それは真っ直ぐで動きや変化に乏しい立ち上がりであつた。この素材も作出された当初は、幹に模様を入れられていたのだろう。しかし九重のおう盛な生長力が立ち上がりに太りを促し、長い持ち込みの過程で模様が薄れていってしまった。樹の立ち上がり裏面に大きな枝抜きの痕跡が確認でき、左右と裏枝の三本で立ち上がりを引っ張り、模様を消してしまつたと考えられる。