寒冷地の水稲湛水土中直播栽培における一発処理除草剤の使用条件拡大 のためのピラゾレー卜粒剤少量散布の適用*

摘要

秋田県における2010年の水稲直播栽培の面積は，水稲栽 培面積の1.3%に相当するl,152haであるffil)。これらの水田 の雑草防除では，主たる除草技術として，移植栽培と同様に 一発処理除草剤力《用いられている。水稲直播栽培に農薬登録 されている一発処理除草剤の使用時期は，多くの場合薬害を 生じないィネ2葉期を早限，雑草ヒェの枯殺限界の2.5葉期 を晚限とする期間である。しかし，秋田県においては，播種 後のイネの葉齢より雑草ヒェの葉齢が速く進展するため（三 浦2010),—発処理除草剤のィネに対する安全性と除草効果 が両立する使用適期となる日数が，1-3日程度と極端に短く なることがある（田口ら2003)。その場合，生産現場では一 発処理除草剤の適期使用力咽難となり，このこと力埴播栽培 における雑草防除の効果不安定要因の一つとなっている。ィ ネに対する安全性がより向上した一発処理除草剤の開発力"寺たれる力《，現在流通している一発処理除草剤の性能を十分に 発揮させる方策が当面必要な技術課題となる。播種後の早期に発生する雑草ヒェをイネ2葉期以前に使用出来る初期除草 剤により抑制（児嶋ら2000 ；山本、菊池2006)できれば， 一発処理除草剤の使用時期となる日数が拡大され，イネの生 育が進み，かつ雑草ヒェの枯殺限界葉齢の範囲内の時期に一 発処理除草剤の散布が可能となり，除草効果が安定する可能 性がある。直播水稲に農薬登録されている限られた初期除草 剤の中で，ピラゾレート粒剤はィネに対する安全性が高く （石 田ら1984)，雑草ヒェ（石田ら1984;藤田1999)ゃ直播栽培 で問題となるイボクサMnxIannia keisak (Hassk.) Hand.-Ma2z.] (荒井ら2007)に対する効果も高い。一方で，農薬登録での 使用量（製品）が10 aあたり3 kgであり，1キロ粒剤および フロアブル剤の3-6倍になること，および初期除草剤の中 では価格が高いことが作業性およびコスト面での課題とな り，ピラゾレート粒剤は現場で利用されにくい実態がある。 そこで，移植栽培ではいくつかの初期剤の使用方法に採用さ れている少量散布「水稲用除草剤では，フロアブル剤などの 散布液を通常使用量よりも少なく散布する使い方のことをい う。初期剤や初期一発処理剤を前処理剤として少量散布し， 一発剤や中期剤を体系処理して利用される。（独立行政法人 農業、生物系特定産業技術研究機構編2006)」の湛水直播水 稲への応用を発想した。すなわち，これまでの初期除草剤の 除草効果が不足した場合に一発処理除草剤（福島ら2000)を， 一発処理除草剤の防除効果力s不足した場合に中、後期除草剤 (渡邊、川名2006)を追加散布する雑草防除体系とは別に， 一発処理除草剤の効果を最大限発揮させる使用時期（日数) の拡大と除草効果の安定化を目的に，ピラゾレート粒剤の 10aあたりの使用量を従来の使用基準の半量（1.5kg，製品） まで減じて少量散布した場合の湛水直播栽培での初期除草剤 としての適用'性を調査した。