知床半島の植物的自然と世界自然遺産の指定

摘要

北海道知床半島は、2005年7月14日、世界道産条約に基づく世界自然遺産の指定が決定した。 この指定は、流氷が接岸する世界最南端地であり、海洋生態系と陸域生態系の密接なつながりから生じたカラフトマス、シマフクロウ、エゾヒグマなどを含む知床独自の生物多様性が評価されたこと、また国と道、地元自治体の連携による自然の保護管理体制が評価されたことが大きな要因といわれる。しかし、この指定は、2008年までに海獣類保護と漁業の調整を含む海域管理計画の策定を完成させ、オショロコマ、カラフトマスなどのサケ科魚類に対する砂防ダムの影響と対策に関する戦略を構築するなど、「条件付きの指定」であり、種々の準備を重ねた知床の自然保護策は今なお世界自然遺産の水準に不足があると指摘されている。指定の決定後、観光客増加による経済効果が報じられているが、それに伴って新たに生じるマイナス効果に対する危倶の声も大きい。