細菌毒素を味方にする－毒素が薬に食物に？その生命科学への応用とは

摘要

毒素がいろいろな生物分子ツールとして利用され始めている。本稿では，特に細菌毒素の医学や農業分野での基礎と応用に焦点を当て，毒素のピンポイントな作用が身近なところで，しかも意外なところで利用されている現状とその問題点や将来への展望について概説する。細菌毒素は，病原性だけでなくその強力な殺傷性から生物兵器として利用されるなど，われわれにとって決して好ましいものでほない。ところが，そhな毒素が医療や農業分野で応用されている（応用され始めている）と言ったら驚かれるだろうか（図1A）。本稿では，そhな毒素のパラドックス（逆説）的研究について焦点を当てる。ウイルスを含め毒素利用を広義にとらえると，1796年，英国の開業医であったエドワード、ジェンナ一による天然痘ワクチンが最初であろう（図1B）。現在でも三種混合ワクチン，インフルエンザウイルスに対するワクチンは欠かせない。しかし，免疫系を利用した毒素応用はここでは割愛したい。