行動遺伝学の現在

摘要

双生児法などの血縁者の類似性の系統的な比較によって明らかにする人間行動遺伝学により，人間の心理、行動的形質に及ばす遺伝的影響について，さまざまな知見が得られるようになっている．その方法論は，特定の遺伝子の特定の行動パターンへの関係を直接明らかにするのではなく，潜在的なレベルでの心理、行動傾向に及ぼす潜在的遺伝傾向の影響を推定するものである．双生児の類似性のパターンからは，相加的適任，非相加的遺伝，共有環嵐　非共有環境の相対的寄与率が推定されうる．環境要因で重要なのは，非共有環境である．近年の構造方程式モデルによる多変量遺伝分析では，知能の構造の非モジュール性や発達的変化への遺伝の寄与，性格特性の構造における因子の独立性などに関する知見が得られている．さらには性格や知能にかかわる遺伝子の探求までなされるようになってきた．