海の男達の安全を守る海上通信の夜明け～戦乱～無線電信の全盛～技術革新：船舶の安全と無線通信の発達小史

摘要

無線通信が海上活動の安全に役立ってきた百年有余を物語るについて，その技術の変遷をいくつかの期間に区分して考えるとわかりやすいと思います．そこで，時代を大まかに次の四つに区切ってみました．第1の時代は，無線電信が発明され船舶との通信のために海上に導入されはじめた時代（1901～1912年）で，これを「海上通信の夜明け」とします．第2は海上安全のための通信秩序が確立されたにも関らず，幾多の世界大戦に翻弄された時代（1912～1945年）で「戦乱の中の海上通信」とします．第3は戦後の平穏期で，技術が発達し無線電信が最も効果を発揮した一方，省力化に目を向けた時代（1945～1990年）で「無線電信の全盛期から終末へ」とします．第4の時代は衛星通信やディジタル技術が導入され，モールス無線電信に依存しなくなった時代（1990年～）で「海上通信の技術革新」とします．このような背景のなかで，無線通信の技術と運用の在り方がどのように変遷して来たかについて解説を試みようと思います．