重症筋無力症で胸腺腫術後，突然の呼吸不全でSTが上昇した80歳の女性

摘要

本症例は胸腺腫術後，重症筋無力症クリーゼによる呼吸不全および気管揷管の際の身体的ストレスを契機に発症したたこつぼ心筋症(たこつぼ型心筋障害）である.急変時ST上昇し心ェコ一上左室心尖部が広範囲に収縮低下しており， まず鑑別すベき疾患はST上昇型急性心S名梗塞または冠攣縮性狭心症である.心筋収縮障害範囲の割に心筋障害マーカーのトロポニンT上昇は軽度，CKも正常で，心筋逸脱酵素の上昇が軽微なため急性心筋梗塞は否定的と考えた.気管揷管下であつたが，ST上昇持続し心室頻拍が頻発するため原因検索は急務と考え心臓力テーテル検査を施行した.冠動脈造影の際もSTは上昇していたが，冠動脈に有意狭窄病変や閉塞病変，冠攣縮は認められず，急性冠症候群は除外された.また，左室造影では左室心尖部のバルーン状無収縮と心基部の過収縮を認め，たこつぼ心筋症と診断した.