アントラサイクリン系薬剤 とくに造血器腫瘍治療薬として

摘要

アントラサイクリン系薬剤は固形腫瘍，造血器腫瘍に対する化学療法で不可欠の薬剤であり，とくに急性白血痕悪性リンパき阻多発性骨髄腫などの造血器腫瘍の標準的化学療法にもかならず組み込まれるkey drugである．急性骨髄性白血病ではダウノルビシンとイダルビシンのいずれかがシタラビンとの併用で寛解導入療法に使用されるが，どちらの薬剤が優れているかの最終決着はついていない．Hodgkinリンパ腫,aggressive非Hodgkinリンパ腫,多発性骨髄腫に対する，標準的化学療法ではドキソルビシンが各標準的化学療法のkey drugとして使用されているが，蓄積毒性としての心毒性が問題となる．近年，画期的な分子標的薬が臨床応用されてきているが，いずれの分子標的薬も単割で治癒を期待させるような長期無増悪生存を得ることができないことは周知であり，アントラサイクリン系薬剤を中心とした化学療法との併用が重要であることが検証されてきている，今後はこうした分子標的薬の応用によってアントラサイクリン系薬剤の投与量の軽減がはかられるとともに，liposome包埋化ドキソルビシン（Doxil~R）のような低毒性の剤型開発が進むと思われる．