予防の可能性を問う

摘要

大腸癌に対する発癌予防研究の現状を紹介する.大腸癌の発生を予防する方法としては，禁煙や過度な飲酒 の制限，適度な運動，食生活の指導などの生活習慣の改善，前癌病変である大腸腺腫の摘除，化学物質の投与 により発癌を予防する化学予防，家族性大腸腺腫症などの超高危険度群での予防的大腸摘除術などがある.それぞれについての最近の知見を紹介し，とくに著者らが実施している家族性大腸腺腫症（FAP)に対する内視鏡による大腸腺腫の徹底的摘除の内容については詳しく紹介する.大腸癌の発生を予防するためには生活習 慣指導を基本とし，内視鏡による大腸腺腫の摘除を中心に，大腸癌高危険度群に対しては化学予防を併用する戦略が望ましいと考えている.