血管細胞のアポトーシス-血管平滑筋細胞と内皮細胞のアポトーシスの機序と病態生理的意義-

摘要

組織リモデリングにおいては,細胞増殖と同時に細胞死が重要である.細胞死はネクローシスとアポトーシスに分類される.血管構成成分である内皮細胞と平滑筋細胞にもアポトーシスを生じることが報告されており,動脈硬化を代表とする血管病の発症,進展,転帰に深く関与している.内皮細胞死は動脈硬化の発症に関与しており,平滑筋細胞死はプラークの脆弱化による急性冠症候群の発症要因と想定される.血管細胞のアポトーシス促進因子と抑制因子が同定されている.アンジオテンシンl一などの高血圧誘発性血管作動物質は内皮細胞に対してアポトーシスを促進する一方で,平滑筋細胞に対しては逆にアポトーシスを抑制し,肥大と増殖を促進する作用がある.血管細胞のアポトーシスは高血圧性血管障害の病態生理に深く関与していると考えられる.その機能を解明し制御機横に介入することは,今後高血圧に合併した血管病の治療に貢献すると期待される.