わが国の末梢動脈閉塞症の疫学

摘要

わが国ではBuerger病は激減し，末梢動脈疾患PADのほとhどは動脈硬化を原因としており，閉塞性動脈 硬化症と同義語として使用されている.PADの診断にはドプラ血流計を用いた足関節部動脈圧測定が行なわ れ，上腕血圧との比（ABI)が用いられる.0.9以下のものではPADの存在が疑われるが，心血管イベントの発 生率が高い0.91~0.99のものも境界域として注目されている.わが国におけるPADの有病率は，高齢者で はABIが0.9以下の者は3%前後と考えられるが，境界域を含めると10%前後にみられ，加齢とともに有病 率は上昇し，とくに糖尿病ではその傾向は顕著である.PADは心臓や脳の虚血性血管疾患を併存することが 多く，ァテロ一ム血栓症の一部分症と考えられ，65歳以上の高齢者では無症候性であっても心血管イベント の発生率が高いため，ABI測定を積極的に行うべきと考えられる.