補体は生体防御の中心であった－補体レクチン経路の進化

摘要

抗体やリンパ球などのと卜における免疫の基本形は，サメやエイに代表される軟骨魚類で完成したと考えられている．もっとも原始的な脊椎動物のヤツメウナギなどや多くの無脊椎動物には獲得免疫は存在せず，自然免疫のみが機能している．自然免疫において生体に侵入した病原体を非自己と認識する機構はパターン認識とよぼれ，微生物上に保存されている構造を認識すると考えられている．このパターン認識分子は胚細胞（germ line）にコードされ，生体防御に働くレクチン（生体防御レクチン）もそのひとつと考えられている．生体防御レクチンは自己の糖鎖と結合することはなく，侵入異物の糖鎖を認識する．生体防御レクチンのうち，マンノース結合レクチンやフィコリンは補体レクチン経路を活性化し，その原型を無脊椎動物のマボヤで見出すことができる．このことは抗体と補体古典的経路が出現するまで，補体レクチン経路が生体防御の中心的役割を果たしてきたことを意味する．