大腸癌の孤立性尾状葉転移の1切除例

摘要

画像診断の技術が進歩した今日においても大腸癌の尾状葉への孤立性転移の報告は稀であり，その臨床的特徴は不明である．筆者らの検索しえた限りでは大腸癌の孤立性尾状葉転移の報告は本邦では10例のみであり，欧米の文献に．は報告例を見出せなかった．筆者らはS状結腸癌術後，異時性に発見され切除しえた孤立性尾状葉転移の1例を経験したので，若干の文献的考察を加えて報告する．患者：70歳，男性.主訴：なし.家族歴·既往歴：特記すべきことなし．現病歴：1996年7月に当院においてS状結腸癌に対してS状結腸切除術（D3郭清）を施行し，手術所見ではP_0，H_0であった．摘出標本では腸管環周の約2/3を占める2型の腫瘍を認め，組織学的には中分化腺癌で，壁深達度はss，脈管侵襲は陽性で（ly_1，v_2），第1群リンパ節にのみ2個の転移を認めた．術後の補助化学療法として術当日から5－FUを600mg/body/日で2週間持続静注した．