腹壁腫瘤を呈した放線菌症の1例

摘要

放線菌症は近年抗生物質の発達により比較的稀な疾患となってきており，なかでも腹部放線菌症の報告はわずか110例足らずである．ゎれわれは今回腹部腫瘤を呈した放線菌症の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する．患者：75歳，男性 主訴：左側腹部痛 既往歴：糖尿病，高血圧．20年前に内痔核根治術を受けている．現病歴：1996年1月，左側腹部痛が出現し当院内科を受診した．CRPは9.1mg/dlと高く，血沈も72/104mmと亢進していたが発熱はなく，WBCは8,300mulと正常であった．画像検査にて特に異常は認めなかったが，腹型の炎症を疑いクラビット投与を行い軽快した．1997年6月中旬より再度左側腹部痛が出現し内科に来院した．来院時CRPは5.07mg/dlと高く，血沈も76/103mmと亢進していた．WBCは8,600mul（好中球56％，リンパ球28％，単球10％，好酸球4％，好塩基球2％）で核の左方移動を認めた．そのはかの血液検査成績では異常を認めなかった．入院後，腹壁の炎症を考えPIPC，その後CTMを投与しCRPは減少し,痛みは軽快したが腫瘤は消失せず，外科に紹介された.