Borderline resectable cancerに対する術前化学療法

摘要

Borderline resectable cancerとはもともと膵癌の 診療から生まれた概念である.膵癌においては遠隔転 移があれば手術適応はないが，門脈，腹腔動脈，上腸 間膜動脈などの主要な血管と近接しているという解剖 学的事情から，遠隔転移がなくても切除不能と判断さ れることが少なくない.それでも何とか切除可能と判 断されればまず手術を予定し，血管合併切除を厭わず 技術的に可能な限り根治的な切除を心掛けるのが膵臓 外科の基本方針であった.こうして症例を積み重ねた 結果，せっかく苦労の末に切除しえても切離断端陽性 であれば著しく予後不良であることが判明した.そし て，特に動脈浸潤を有する膵癌切除例における高い断 端陽性率は必ずしも手術技術の習熟によつてのみ解決 される問題ではなく，努力しても断端陽性になる事実 が生物学的悪性度の高さを物語っているとの見方も出てきた.