回盲部が嵌頓した鼠径ヘルニアと小腸捻転が合併した総腸間膜症の1例

摘要

総腸間膜症とは腸回転異常症の1型で，小腸と結腸が共通の腸間膜を有している状態をいう．今回筆者らは右鼠径ヘルニア嵌頓の手術を施行したところ回盲部が嵌頓しており，腹腔内で小腸の捻転を併発していた総腸間膜症の稀な1例を経験したので，文献的考察を加えて報告する．患者：65歳，男性.主訴：右鼠径部の膨隆と激痛.家族歴·既往歴：特記すべきことなし．現病歴：数年来右鼠径ヘルニアを指摘されており，自己還納していた．2000年4月25日右鼠径部から陰嚢にかけて膨隆し，激痛を伴い自己還納不能のため，当科を受診となった．来院時現症：血圧169/95mmHg，脈拍68/分．下痢，嘔吐なし．腹部は平坦で腫瘤を触知せず，圧痛なし．腫瘤は右鼠径部から陰嚢にかけて小児頭大に腫大し，弾性硬の堅さで圧痛を認めた．激痛を伴い，用手的に還納は不可能であった．