Fe/TiN 人工多層膜を用いたトラップ水素位置の解析その６

摘要

1200MPa 超級の高強度鋼では、水素脆化の防止が最重要課題の一つである。水素脆化は、腐食反応などにより発生? 吸蔵された拡散性水素に起因すると考えられている。このため、水素脆化の防止策の一つとして、拡散性水素のトラッ プ作用を有するTi やV などの炭窒化物の分散が試みられている１）。これらの炭窒化物による水素のトラップ挙動は、 これまで昇温脱離分析法などによって調べられているが、多くはサブミクロン以下の微細析出物形態であることから、 トラップ水素を直接検出した例は少ない２）。我々は、Fe/TiN多層膜を人工合成して水素(H)および重水素(D)チャージを 行い、大気圧イオン化質量分析法(API-MS)と二次イオン質量分析法(SIMS)によりトラップ水素の存在位置(分布)の解析 を試みた。その結果、Fe/TiN 多層膜中に吸蔵したHあるいはDはFe/TiN 界面近傍に存在していることが示唆された 3-6)。多層膜界面にトラップされた水素の非破壊の解析方法としてX線あるいは中性子を用いた反射率測定が有効と考え られる。本稿では、Fe/TiN 多層膜においてD の存在の影響についてシミュレーションを行い、反射率測定の有効性を 検討したので報告する。