リビア内戦原油一段の急騰,120ドル指向生産·輸出も半減以下に

摘要

中東·北アフリカ（MENA）の政治情勢かますます緊迫してきた。チュニ／アに始まった民主化の動きがエジプト，リビア，イラン，イエメ／，ハーレーノ，サウノアラヒアなどMENA一帯へと拡大し，各国で現政治体制，王政などに対する批判が噴出し，リビアでは事実上の内戦状況となっている。20世紀的な政変·革命·動乱などと異なっているのは，明確なイデオロギーや革命理論，旧体制に代わる国家体制のビジョン·理論を持たず，指導者も指導政党·政治勢力も明瞭にはみえない中で，ネット革命がいわば「自然発生的」に進行していることだろう。この事態の急速な進展に戸惑っているのは，当該諸国の支配的勢力だけではない。米国，EU，ロシア，中国などもいずれも困惑している。少なくともエジプトなどでは人権問題が差し迫った課題として取り上げられたことはなかったし，イランはともかくとしてその他の多くの国でも国民の政権に対する不満·怒りが，先進国のメディア等にそれほど喫緊の問題として報道されても来なかった。これだけ速いペースで政治的騒乱が拡大しているのだから，それぞれの国民にとっては止むに止まれぬ行動だったのだろう。しかしながら，先進諸国はこのMENA一帯を「石油·ガスのかけがえのない供給地域」とみなすことで，その政治的安定をひたすら求めてきたというのが偽らざるところではないのか。米国に反逆したイラク，イラン，アフガニスタンには，軍事介入を含む厳しい対応をとってきたが，とにかくそれ以上の政治危機拡散は回避し，イスラエル問題を開けてはならない「パンドラの箱」に封印してきたのだろう。中国，イランの人権問題は追及するが，エジプトの人権問題など何の話題にもとり上げないダブル·スタンダードに今回のMENA騒乱は，－つの大きな回答を先進諸国に迫っているといっていいだろう。しかし，この記事でも求められているのは，この地域の混乱が続くことにより，果たして石油の価格がどれだけ急騰するのだろうかということであり，これがもし最大の産油国であるサウジアラビアに波及し，併せてペルシャ湾がきな臭くなることで，どれほどの石油供給削減が生じて，わが国経済が困難に遭遇するか，ということになる。ただ，我々にいえることは，MENA諸国で起こっていることはそれぞれの国家と民族と権利の問題であり，これにいたずらな介入，それも石油権益擁護を前提とした軍事介入は絶対にしてはならない。民主主義の大原則の一つは「民族自決」である。