粘着の話(2)

摘要

レール上を転動する車輪にトルクを加えた場合，接触面で伝達される接線力とその相互間のすべりの間には，すべりのごく小さい領域ではほぼ比例関係にあるが，その後トルクを増加すると比例関係がくずれ，遂にはすべりが増えても接線力が増加しないで逆に低下する限界に達する．限界に達するまでの接線力を狭義の粘着力と称し，限界の粘着力を垂直荷重で除した値が粘着係数といわれる．その後はすべりが急増し，駆動（力行）の場合には空転，ブレーキ時には滑走という状態となる（図－11）．すべりが大きい領域でも粘着力が無くなるわけでないが，一般に粘着力は微小すべり領域で利用される．なお，接線力は計測可能な力であるのに対して，粘着力は潜在的なポテンシャルカと考えると理解しやすい．