省略4誘導心電図による小，中学校生に対する学校心臓検診の心電図異常抽出の相違 時にQ波異常抽出と心臓系突然死疾患の関連についての検討

摘要

学校保健法より，1993年から小，中学校1年生に心電図模査による心臓検診が義務付けられているが,全心電図検査による異常心電図の抽出率の年齢による相違や心臓突然死疾患に対する有効性に関する報告は稀である．本研究は，省略4誘導心電図による小，中学校生の学校心臓模診の心電図異常の相違を明らかにするとともに，特にQ波異常抽出の心臓系突然死疾患に対する有効性を検討した．1996年から2003年までの，姫路医師会学校心臓検診委員会で施行している，小，中学校生85，詔5人の省略4誘導心電図結果から，心電図検査のみで診断しえる，Q波異常伝導障害（PQ延長，II度房室ブロック，不完全右脚プロッケ完全右脚ブロック，完全左脚ブロック，WPW症候群），不整脈（上室性期外収縮，心室性期外収縮），及びQT延長の項目で疾患分類を行い，各心電図異常疾患の抽出率の年齢による相違を比較，検討した．また，特にQ波異常抽出の心臓系突然死疾患に対する有効性を検討するために，当委員会が把握してきた小，中学校生の心臓突然死10例の検討を行い，心電図検診の役割を評価した.小学校1年生群で中学1年生群より検出率が優位に小であった疾患群は，ll度房室ブロック（p＝0．002），完全右脚ブロック（p＝0．017），WPW症候群（p＝0．025），心室性期外収縮（p＝0．025）であった．一方，Q波異常は小学校1年生群が中学校1年生群に比べ有意に大であった（p＝0．048）.　その他の疾患群の検出率は，両群間に有意差を認めなかった．小，中学校生の突然死症例は10例でその中7例は中学生で，男女比は7：3と男子の方が多かった．突然死以前に心電図検査を施行されていたのは7名で　Q波異常を指摘されていた症例はなかった．姫路市医師会学校心臓検診では，年齢が上がるほど房室ブロック，完全右脚ブロック，WPW症候群，および心室性不整脈の頻度は増加したが,Q波異常抽出頻度はむしろ小であった．また，Q波異常抽出にて致死的心筋症を早期発見することば難しいと考えられた．