韓国社会の性役割の「多様性」-農村家族の経済活動を中心に-

摘要

従来の韓国社会研究において，儒教規範「内外」に基づく厳格な性役割区分という問題は多くの関心を集めて来たが，これまで特に問い直しもされて来なかった。 本論文は，既存の民族誌資料が記録して来た農村家族の経済生活に着目し，韓国の家族生活が「内外」に基づく性役割区分の上に成り立ってきたのかを検証する。 資料の検討から明らかになったのは，実際の家族生活における性役割区分のあり方は社会階級や地域による差違が大きいこと，そして，性役割区分の境界は各社会において「内／外」よりも複雑?多様に設けられていたことである。 性役割の「多様性」を明らかにする本研究は，儒教社会として韓国社会を見て来た従来の視点を相対化させ，今後の研究の深化に寄与するものである。