コンクリートにおけるひび割れの自己修復

摘要

コンクリートは，基本的にはセメントと水を練り混ぜて水和反応を生じさせて結合材となし，大小様々な骨材を結合してできるものであるために，水和反応に伴う自己収縮や水分の蒸発，逸散による乾燥収縮は必然的に起こるものである．従って，極めて特別な対策を講じない限り，大小の差はあっても収縮ひび割れの発生を避けることは難しい．また，圧縮応力の作用に対しては比較的に高い強度を有してはいるものの，引張応力に対しては圧縮強度の約10分の1と弱く，構造用材料として用いる場合には通常，引張応力の作用部分に対して鉄筋を適切に配置して補強することが求められる．従って，コンクリートにひび割れが発生すると，部材剛性の低下に加えて，雨水の浸透などにより鉄筋の錆びを引き起し，構造安全性の低下にもつながるために，構造物の変状を定期的に検査·判断し，適切な維持管理を行うことが求められている．本稿では，コンクリートに生じたひび割れを自己修復するようなシステム開発に関する研究の現状について概説する．