カーボンナノチューブの技術·実用化動向

摘要

約20年前に日本で発見された物質、カーボンナノチューブ（CNT）。発見から最初の10年間は大学を中心とした研究機関によって学術的な研究が盛んになり、新材料としてのユニークな構造およびその構造に由来する特異な物性が明らかにされてきた。2000年代に入り、電気伝導性、熱伝導性、耐熱性、機械的物性などその優れた特性に着目した応用研究が活発化し、夢の新素材として複合材科、エレクトロニクス、エネルギー、バイオ·医療など様々な分野で研究開発が精力的に進められた。しかし、品質の安定したCNTの量産が難しい、バンドル（束）状態のCNT（図1）を分散することが難しいなどの理由からなかなか実用化に結びつかなかった。さらにアスベスト（石綿）と類似の健康被害が懸念され、CNT開発はトーンダウンすることになる。