小学校の教育活動を通じた地域社会における育ちの環境づくり －島根県Y小学校におけるサケの学習を事例として－

摘要

近年小中学校において，自分たちの住む町や身近な地域を題材とした，体験的、実証的な学習が広く取り組まれるようになった。学校数育面のねらいとしては，子ども達の学びに対する意欲や自主性の向上，また考える力や問題解決能力等を高めるなどが挙げられる。そして学校と切り離せない関係にある地域社会を踏まえ，学校の創意工夫による教育活動の企画、運営が試みられている。　翻って地域社会の面からみると，学校数育におけるこの動きは，子ども達があらためて地域に目を向ける重要な機会といえる。農村、都市によらず核家族化，高齢化が進む一方の中，子ども達が身近な高齢者とふれあう機会がない，地域で遊ぶ姿もみられないとの危倶が開かれる。このような現状に対し，学校数育で地域の歴史、自然、産業、慣行慣習，そして地域の人々に関する事柄を学ぶことは，子ども達の自尊心やふるさとに対する誇りを育むと共に，ゆくゆくは地域の担い手としてこの土地に残るであろうという期待をも抱かせる。そして地域住民自身が‘‘地域の先生”役や教育活動運営に参加協力することは，子ども達にとってごく身近な地域の父母、祖父母がいるようなものとなり，地域社会で子ども達を見守り育てる環境づくりのきっかけにもなりうる。