先行き不透明感が増す中でもESGやSDGsへの対応を迫られる企業

摘要

日本IR協議会が毎年この時期に集計·発表しているIR活動の実態調査について2021年の結果を本号「REPORT」で取り上げている。この調査は全上場会社3,890社を対象にしているが、回収率が26.5%とあまり高くないのは残念だ。それでも定点観測という意味合いは大きく、今年は28回目であり、回を重ねるごとにIR活動重視の経営が当たり前になりつつある実態をうかうことができる。調査項目は毎年ガラリと変わるわけではないが、2020年はコロナ禍という特異な状況下にあってIR活動にもさまざまな支障が出たと考えられることから、新たに「Afterコロナ」の中期戦略·長期ビジョンに関する設問を設けた。まず、中期経営計画を「策定し公表している」企業の割合は69.2%で、「策定しているが非公表」は21.8%、策定していない」が8.6%だった。同様に長期ビジョンについては、それぞれ41.5%、17.7%、40.1%となつた。中期経営計画等を策定している企業に、「Afterコロナ」を念頭に置いた今後の取扱いを聞いたところ、「現行計画やビジョンに現時点で修正の必要はないと考えており、基本的に次の改訂時期まで変えない方針である」が45.1%と最多だつた。しかながら「現行計画やビジョンで示した理念や方向性は変えないものの、実現に至るアプローチや目標数値には修正が必要と考え、現在修正作業を進めている」も37.2%と多かった。また「Afterコロナ」下で中·長期戦略やリスク管理などを検討する際の課題や取組みを尋ねたところ、「先行きの不透明感が増す一方で、機関投資家などからはESGやSDGsへのコミツトメントを求める声が強まる公算が大きい。両者のギヤップを埋めるのは容易ではないが、企業としては愚直な取組みを続けていく」が49.7%と半数近くを占めた。将来見通しが不透明でも、ESGやSDGsについては可能な対応を継続していくという姿勢だろう。