コロナとの共存を通じた経済の復興へ舵を切るインド

摘要

コロナ禍による経済への影響が長期化·深刻化するにつれて、各国は都市封鎖による感染拡大の徹底抑止からコロナとの共存(with Corona)を通じた経済の復興へと舵を切っている。この政策は必然的に感染の再拡大リスクをもたらすものだが、＊罹っても重症化させない＊クラスターを発生させない＊経済活動をとめない、という"3ない"で、with Corona時代を生き抜こうとする決意を各国とも固めつつあるようにみえる。 その代表例がインドだろう。同国の中央政府は、まだ大流行下とは言い難い状況にあった3月25日(当時の感 染者数は434人)、ロックダウンに踏み切り感染抑制に努めた。しかし経済活動への影響が甚大である割に、感染拡大の勢いは止まらなかった。こうした状況も踏まえて政府はコロナ禍との共存を覚悟し、6月1日からロックダウンを段階的に解除、徐々に経済活動の再開を認めつつある。失業率の急上昇や経済成長率の落込みを座視できなくなったためだ。まだロックダウンが続いていた最中の5月、モディ首相は国民に向けて演説。「これからの世界でインドが生き残るためには、"自立したィンド"を実現しなければならない」とのビジョンを示した。政権がかねて掲げていた製造業振與政策「メーク·イン·インディア」をさらに加速させること、グローバルサプライチェーンの中でインドが大きな役割を果たすことに向け、決意を新たにしたものだ。こうした首相のビジョン実現に向け、さまざまな動きが出てきている。6月初めには、投資誘致に向けた省庁横断的な次官級委員会が発足。また在日インド大使館では6月以降ほぼ毎週、産業別·地域別のウェビナーを日本企業向けに開催している。コロナ禍と戦い共存しながら、次のビジョンをどのように描き行動するか。インドに限らず、各国には構想力とスピード感が求められている。