グリーン復興とイタリア: ドラーギ政権の政策と展望

摘要

コロナ危機下のイタリアでは，2021年初の政権危機後に誕生したドラーギ内閣が，コンテ内閣に続き，非議員実務家首相が政党の支持を受けながら，危機対応のための政令を連発するという特異な統治を続けている。エリート実務家を主要閣僚に並べた内閣は，グリーン復興を推進するのにふさわしい陣容とも言える。しかし，復興の障害となり得る構造的な問題を克服するためには，インフラの整備だけでなく，旧公企業の経営改善，入札の規制改革，司法制度改革などが必要となる。コロナ禍で苦境に陥った労働者の生活支援は長期化し，産業の構造転換も容易ではないなかで，危機下で広がった国家管理に頼るあまり，政党間の競争や民間の活力を損なうことがないように新しい低炭素社会を作っていくには.まだまだ課題が多い。