トランプ政権の対中政策：分断する米中経済とその行方

摘要

本稿の目的は2017年から発足したトランプ政権の対中政策について，経済（貿易政策）を中心に分析する。オバマ政権時は経済の成長センターとしての中国の役割を重視し，アメリカの貿易赤字を容認してきたが，トランプ政権では明らかに米中両国間の緊張は高まっている。トランプ政権では通商経済だけでなく.安全保障分野での中国の脅威もかってないほど大きく問題視されるようになった。中国の国家資本主義的な体質を問題視する見方は，トランプ政権だけでなく，民主党にまで広がり，党派を超えて広く共有されるようになっている。米中対立の根は深く，長期間の「冷戦」化を指摘する声も少なくない。米中の切り離し（デカップリング）はワシントンの合言葉となり，まるで，これから米中が2つの別々の経済圏•貿易圏に収斂していくような様相すらみえる。ただ，貿易戦争の行き過ぎはアメリカ経済にもマイナスであるため，「中国は敵ではない」と主張する識者が声を上げつつある。貿易面での部分的な妥協を期待する声もあるが今後の情勢は不透明だ。