低濃度のニオイが及ぼすラットの記憶•学習機能への影響を検討するための行動実験

摘要

【背景】嗅覚は多くの動物にとって、食べ物の探索、危険の察知、社会性コミュニケーションや繁殖 行動など、個体の生存と種の維持にかかわる重要な感覚センサーである。一方で、職場等で多用され る有機溶剤類は、健康影響が生じないとされる規制値以下の低濃度でも、その「ニオイ」で不快感や 病的状態が生じる場合がある事が報告されている。また、ニオイ提示後に脳波が変化した、情動 や注意力の変化を感じたとの自己申告もある。これらの報告から、ニオイが作業現場等で必要とさ れるさまざまな行動にも影響を与える可能性が懸念されるが、体系的な行動試験によりその影響が示 された実証実験例はほとんどない。今まで-オイというと、その毒性すなわち健康影響に焦点が当て られており、健康に影響のないごく低濃度の化学物質のニオイにより行動がどのように変化するのか を調べることは、作業現場におけるニオイの効果を考える上で重要であると思われる。また、ヒトで はそれぞれ-オイに対する履歴が異なり、情動反応や嗜好も個体差が大きいため、ニオイを使用した 実験には困難が伴う。