山地河川からの土砂流出に起因する災害の対策に関する研究について

摘要

我が国の河川上流部(山地河川)は、急峻な地形や脆弱な地質、大量の降雨等により、活発な土砂生産の場となっており、大量の土砂を流域の広範囲に流出させて災害を引き起こす危険性を有している。そのため、水系全体を対象として、河道への土砂堆積の進行による河床上昇が引き起こす水•土砂氾濫防止を目的に、古くから河川上流部や水源地帯において、砂防事業が実施されてきた。このように、流域の広範囲に及ぶ土砂問題の根源となる土砂生産源の安定という重責を担いながら砂防事業が長年実施されてきた結果、近年では山地河川からの土砂流出による災害は減少してきたと言える。しかし依然として、豪雨の度に上流域で多発する崩壊や土石流により、山間集落における住民の生命と財産が失われ地域社会の営みに影響が生じているほか、流出した土砂の貯水ダムへの堆砂によるダム機能の減少や河床上昇による浸水被害のポテンシャルの増加、大量の流木の流出•堆積など、山地河川から流出する土砂や流木により、流域の広範囲に及ぶ様々な影響が各地で生じている。さらに近年、地球規模の気候変動に伴う降雨量の増加や迫り来る巨大地震により、一度に大量の土砂生産•流出を引き起こす同時多発型の表層崩壊や土石流、深層崩壊、天然ダムの決壊等、流域の広範囲に深刻な影響を与える水•土砂の氾濫による災害の危険性は、依然として高いと言える。