風送塵の地球環境に与える影響: 氷期・間氷期，完新世，現代

摘要

風送塵の生産・運搬は気候システムに影響されるが，逆に，放射強制力あるいは生物生産などrnを通じて気候にも影響を与えている．地球的規模での風送塵の生産量ほ1,700Tg yr~(-1)と推定さrnれており，アフリカ大陸起源が66％程度で，風成塵の海洋への沈積流量は450Tg yr~(-1)で，河川rnからの杜子状物質流量の3％となる．外洋域への石英砂やアルミノ珪酸塩の運搬では，風速塵のrn役割が重要となる．砂模の風送塵は直径が0.1～10μmで，中心粒径2μmが卓越している．風送rn塵の生産ほ，一般に風速の3乗に比例する．風送塵の滞留時間は通常数時間から数週間で，何千rnkmという単位で輸送される．しかし，風送塵の堆積過程あるいは大気中の濃度は不均一性が高rnく，実質的に1日程度という時間スケールで大きく変化している．風送塵の生産・運搬には，そrnの地域の気候が大きく反映する．太平洋中央部の堆積物柱状コアの解析より，風送塵の沈積流量rnは過去20万年問で156～732mg cm~(-2)kyr~(-1)まで変化した．基本的に，沈積流量の極大は氷期に，rn低い値は間氷期にみられた．炭素循環への影響では，炭酸塩および主要栄養塩であるリンについrnてはほとんど影響を及ぼさないが，鉄あるいはケイ素について，生物生産あるいは珪藻の生産に相rn当量の影響があると考えられる．南極氷床を掘削したVostokコアの解析では，大陸起源風速塵rn含有量は間氷期で50ng g~(-1)，氷期で1,000～2,000ng g~(-1)と大きく変動し，海洋深層循環とリンクrnしたパタゴニアの気候を反映したものと解釈されている．また，エアロゾルによる放射強制力へrnの影響は，直接効果で-0.5［±0.4］W m~(-2)，雲をつくるなどの間接的効果は-0.7[1.1,＋0.4］rnW m~(-2)と推定されているが，誤差か大きい．