伝達手段間の災害情報伝達効果の比較: タイ王国ルーイ県での実証実験

摘要

災害情報の伝達手段は情報通信技術（ICT)の発展に伴い多様化している。インターネットおよび地理情報システム（GIS)を活用したウェブマッピング，TwitterやFacebookなどのソーシャル•ネットワークキング•サービス（SNS)，近年では準天頂衛星やGPSの位置情報を利用した技術も注目されている。しかし，これらの技術はどこでも利用ができるわけではなく，特に開発途上国や農村部においては，情報格差という言葉でも表現されるように，先進国や都市部と比べて情報へのアクセスが著しく制限される。そのような地域においても有効な災害情報の伝達手段に関する研究は数々行われており，特に第2世代(2G)の通信システムを規格とする携帯電話の利用が着目されている。具体的には，携帯電話のメール機能であるショートメッセージサービス（SMS)を利用した緊急警報である。SMSによる緊急速報が有効であるという根拠は，携帯電話の持っ伝達の即時•広域性という技術面の特徴を除くと，主に「住民の高い所持率=多くの住民に情報が伝達できる」という潜在的な可能性に依る所が大きく，「実装ができるか」ということを立証する研究は極めて少ない。そこで本研究では，農村地域においてSMSによる災害情報を発信する実証実験を行い，その伝達効果に関して，災害時の警報に実際に使用される既存の伝達手段と比較検討した。本稿では，実験結果であるそれぞれの手段の情報伝達可能域を視覚的に表現することで，伝達効果の容易な理解•検討に資する比較手法に関して報告する。