H形鋼ウェブ-スプリットティ形式高力ボルト引張接合部の力学的性能に関する実験的研究

摘要

本研究では、H形鋼ウェブの面外変形挙動によってその耐力が支配されるような場合のH形鋼ウェブ-スプリットティ高力ボルト引張接合部について、降伏線理論による耐力評価式を導き、接合部局部引張実験を行って耐力評価式の妥当性を検証した。その検証は次のようにまとめられる。また、H形鋼ウェブに鋼板やアングルを添えることによる補強方法が本接合部の耐力向上に有効である事を確認した。1．接合部の全塑性耐力について、H形鋼ウェブ及び補強プレートや補強アングル材に生じる降伏機構（全4種類）を仮定して全塑性耐力評価式を導いた。接合部局部引張実験の結果から、この全塑性耐力評価式により実験値がほぼ評価できることが確かめられた。2．接合部の最大耐力について、上記1.と同様にH形鋼ウェブ及び補強プレートや補強アングル材に生じる終局機構（全4種類）を仮定して最大耐力評式を導いた。接合部局部引張実験では、その最終状況からH形鋼ウェブに想定した終局機構と対応する面外変形が生じている事が確認できたが、それらの終局機構による最大耐力評価値は実験値に対して過小評価する傾向があることがわかった。しかし、試験体（HCW-S）を除く試験体（HCW-N，HCW-P，HCW-AS）の最大耐力評価値は荷重-局部変形曲線上の大変形域における剛性がさらに上昇する荷重の近傍と対応している。3.3.3節の実験結果より試験体（HCW-N，HCW-P）は部分骨組架橋実験の卜字形骨組に対する接合部局部の挙動と類似している。しかし、試験体（HCW-S）と十字形骨組の接合部局部とでは相違した破断状況を示した。