微動の水平上下スぺクトル比のピーク周期に見られる時間および空間変動: 工学的基盤が平坦なサイトにおける観測事例とその解釈

摘要

微動HVSRのピーク周期が基盤が平坦なサイトにおいても変動するかどうかを調査するために、基盤深さが異なる二つのサイトにおいて微動測定を実施し、その要因を考察するために微動シミュレーションを行った。以下に得られた知見を示す。1.微動観測記録のピーク周期は空間的にも時間的にも変動し、その標準偏差はピーク周期の5%程度になることが確認された。観測点間距離が長くなるほど変動が大きくなり、やがて時間的な変動に近づいていくことを示した。2.振動源をランダムに配置した微動シミュレーションにより、観測記録のピーク周期の空間的な変動を定性的に再現することができた。同じ地下構造モデル、同じ振動源を用いていることから、その変動は振動源からの距離によって生じていると考えられる。3.微動シミュレーションの結果から、ピーク周期の変動は観測点近傍の振動源の寄与が大きいことを示した。振動源の距離による違いで整理すると、ピーク周期の空間的な変動が時間的な変動に漸近していくことが定性的に説明できる。平坦なサイトのピーク周期の変動は約5%であるが、基盤が傾斜しているサイトにおける変動はこの限りではなく、平坦なサイトよりも値が大きくなる。著者らはピーク周期の変動に違いがあることを利用して、基盤傾斜有無を判断するための一つの手段となりうると考えている。その手順の整理については今後の課題としたい。%Focusing on variation of peak period of horizontal to vertical spectral ratios (HVSRs) of microtremors due to time and space at flat engineering bedrock sites, we evaluate experimental variation coefficients and discuss the reason of the variation. The continuous microtremor measuments resulted in significant daily variation of peak periods of HVSRs, which are shorter in daytime of weekday than those in nighttime or weekend. Through a numerical simulation, it implies that the peak period are affected not only by subsurface structures but also by other factors such as the relative locations from stations to sources.