複雑な多谷ポテンシャルエネルギー面上で生起する動力学諸問題:　タンパク質とその周辺

摘要

タンパク質が内在的にもつ「やわらかさ」は多様なダイナミクスを産み出す．タンパク質の「やわらかさ」を端的に表す特徴的なダイナミクスとして，タンパク質の自発的な折れ畳みや基質との特異的結合による立休構造変化などが挙げられる．このようなタンパク質が集合してできる複合体rnにおいては，分子モーターに代表される生体ナノマシンとしての精緻なダイナミクスが実現されている．また，タンパク質問の相互作用は複雑な時空間ネットワークを形成しており，高次のネットワーク・ダイナミクスが実現され，細胞における情報伝達の基盤となっている．本研究会は，タンパク質に起原をもつあらゆる階層のダイナミクスを原子レベルから細胞レベルまで幅広く議論の俎上に載せ，これらのダイナミクスの背後に潜む原理や相互の関係性などについて徹底的な議論を行う場として企画された．研究会には，タンパク質を専門とする研究者はもとより，化学反応論や非線形力学、非平衡統計力学など関連する幅広い分野から多くの参加者が集まり，各分野における研究の現状や最先端の手法，問題意識などが発表されたとともに，参加者の多様なバックグランドを反映して様々な視点からの意見が忌憚なくぶつけ合われた．ここにその報告を行う．