編集後記

摘要

新しい価値や可能性は現状の更新から生み出されることがあります.それは.中井検裕さんの建築論壇にもあるように，建築や都市の再生にとっても大事な方法のひとつです.現在，国内で構想されている都市再生プロジェクトの多くは，かつてのスクラップ&ビルドによる新陳代謝ではなく，その場所の状況を引き継ぎながら更新されており，それを実現するためには，敷地内の建築だけではなく，周囲の関係やパフリックスぺースを含めて考える必要があります.亀井忠夫氏のインタビューでも，パブリックスペースを考えることが，都市の価値に大きな影響を与えるという話を伺いました.今月号ではそうした新しいパブリックスペースをめざしたカンプ•ノウ新スタジアムや，立体道路制度を使いながら構築したバスターミナル，大手町連鎖型都市再生の第三弾など，パブリックスペースを巻き込んだつくり方の蓄積が見られます.また，木造建築や伝統的な神社の更新も，大きなスケールではありませんが，都市の可能性を示すものです.すこしずつ，場所の関係を継承しながら更新することがもたらす価値を考えてみました.