車いす使用者用客室に関する全国調査からの考察: 宿泊施設におけるバリアフリー化に関する研究 その1

摘要

本稿では宿泊施設についてバリアフリー法で定められている車いす使用者用客室に着目して、バリアフリー整備率や宿泊施設におけるバリアフリー化への課題を調査した。車いす使用者用客室は車いすでの移動等に配慮した計画がなされていることは把握できたが、これはバリアフリー法の宿泊施設に関する条文に「車いす使用者が円滑に利用できること」と明記されていて、車いす使用者が宿泊することを前提とした法整備になっているためである。しかし、車いす使用者用客室は車いす使用者以外のさまざまな障害者や高齢者等にも利用されていて、今後は車いす使用者以外の宿泊客にも配慮した客室計画が求められる。さらに、車いす使用者用客室の設置率は低いため、車いす使用者用客室だけでバリアフリー整備について対応することは困難である。東京都A区でのヒアリング調査から、引き戸の設置やスイッチ等の高さ方向の計画については一般客室でも今後の課題とされている。今後も宿泊施設のバリアフリー化についてより詳細な調査が必要であるとともに、一般客室においてもバリアフリー化の整備を進めることで、より多くの人々にとつて宿泊しやすい環境を整備することができる。宿泊施設の規模に影響されることなくさまざまな人々が快適に宿泊するためには、バリアフリー法の適合義務が生じない小規模宿泊施設においても、車いす使用者用客室設置やバリアフリー化の整備を促進することが望ましい。%The following four points were found in a national survey of barrier free accessibility in lodging accommodations. 1. Wheelchair accessible guestrooms have been designed considering the maneuverability of wheelchairs. 2. Wheelchair accessible guestrooms are also used by guests without wheelchairs, and there is a demand for future room designs that consider a wide variety of guests. 3. The rate of installation of wheelchair accessible guestrooms is low. Providing barrier free accessibility in all guestrooms is required to create an environment that accommodates more people. 4. It is important to understand issues related to accommodations of different types of facilities and disabilities of guests.