公営住宅行政における住民自主管理とコミュニティ活動の支援施策に関する調査研究

摘要

This study covers state of implementation of support measures by municipality and the recognition of issues by them on self-management by the residents in public housing. Issues on residents self-management such as degradation and weakening of community order is increasing in municipality that has large management number of houses. On the other hand, municipalities that have performed implementing measures remain in about 10% of the total with the exception of individual correspondence. Although the number of support measures of community activities performed is still small, Nagoya City and Omuta City has taken one-stop service that is limited to public housing.%本研究では、自治体における住民自主管理の課題認識及び支援施策の実施状況の把握を行った。調査結果の分析を通じて次のことが指摘できる。(1) 住民自主管理に関する制度規定公営住宅法では住民が公営住宅の管理の担い手として明確に位置づけられている。また、多くの自治体の公営住宅条例で「住民の費用負担」の条文が見られる。「住民の费用負担」の対象は住戸等の専用空間のみでなく、共用施設や付帯施設の維持、運営費用も含まれ、これらを共益費として条文中で定義する自治体もわずかながら確認できた。しかしながら、共益費の徴収主体や運用方法に関する規定はどの自治体条例にも見られず、負担義務を示すにとどまっている。(2) 公営住宅行政における住民自主管理の課題認識住民による管理の課題は全体では迷惑行為や家賃関連等の個別対応が必要な事案が多いものの、管理戸数が多く、高齢世帯率が高い自治体を中心に共益費の会計内容の混乱や自治会等への未加入者の増加など、集住秩序の低下やコミュニティの弱体化による問題が強く認識されており、集団対応の施策が求められる。(3) 住民自主管理の基盤の整備状況住民自主管理の基盤(管理人及び共益费)の整備状況を見ると、管理人制度を設置している自治体は全体の約6割あるが、全団地で設置している自治体は4割程にとどまる。中でも、高齢世帯率の高い自治体では担い手不足の影響から管理人の設置率が低いが、自治体および指定管理者職員の巡回や自治会等の役員により最低限の業務は補われている。また、共益費は全体の約7割で住民により徴収、運用されている一方、管理戸数の多い自治体では近年になり一部の団地において会計混乱などが生じ、住民管理から自治体の代行徴収へ移行している例が増加しつつある。なお、共益費の会計混乱は自治会等の会費と共益費が混同して運用されることで生じる場合が多く、自治会等における会費と共益費の使用目的や活動内容の整理が必要といえる。(4) 住民自主管理の誘導状況入居手続きにおいて配布される「入居のしおり」では、生活管理面の記載は個人の生活マナーを促すものとして全体に充実しており、維持管理面の記載事項は団地規模が大きくなるほど必要性が増すため、管理戸数の多い自治体で多い。また、運営管理面の記載事項のうち、共益費の負担義務は多くみられるものの、徴収、運用主体を明確に役割づけている自治体は少なく、枠組みの整備が求められる。一方、入居後の住民自主管理を促す取り組みの実施実績がある自治体は広報紙の発行や相談窓口の設置による個別対応を除けば全体の1割程度にとどまるが、中規模の自治体では意見交換会や研修会の開催を通じ、住民の管理技術の向上を図る例も見られる。(5) コミュニティ活動および福祉活動の支援施策の運用状況福祉活動の支援では公営住宅に限定した特定施策はハード整備とソフト面の取組みともに、高齢者等の居住支援に偏り、子育て支援はほとんど見られない。また、コミュニティ活動の支援施策は未だ実施数は少ないものの、名古屋市と大牟田巿は、ワンストップ型の特定施策を実施し、住民との協議の場を設けて住民管理の課題と対策について話し合った上で、支援を講じている。また、両自治体の支援施策は生活管理面だけでなく、共用施設の利用促進や運営主体の形成、緑地の手入れなど運営管理面、維持管理面の向上にも寄与している。