建築法規調査委員会の見解と建築法案要綱: 建築法草案の検討過程に関する研究 その2

摘要

本稿では、終戦直後に提案された建築法要綱試案に対する専門家の見解とその後の修正の過程を整理することで、建築法草案完成に至るプロセスの一端を明らかにした。以下、その特徴と意義を整理する。単体·集団を書き分け、中でも、建築法規における積極的な集団規定の制度化を目指し、事業計画といった都市整備の領域をも含んだ法規案に対して、有識者は多角的な議論を展開しながらも、集団統制の思考をもった法規の重要性、将来的な都市像の実現を視野にした建築法規を目指す姿勢に同意する見解が示される。こうした点は、戦前の建築·都市計画制度に対する不足、積極的な改定の必要性が強く認識されていたことを裏付けることにあたろう。特別委員会による修正をみても、『第六章防火建築事業』を新たに事業法としての意味合いを強めて章立てしたこと、特別地区を用途による基準分類とした判断から建築形態と都市の美的観点に配慮し、『第八章景観』を設けるなど、本院側の提案を一層、積極的に制度化しようと試みている。すなわち、建築法草案に内在する理想提案は、本院担当者のみならず、有識者の見解からもたらされたのである。これに加えて、建築制限区域、建築協定、建築士等の資格化といった提案もその意義を明確にし、具体の運用を視野に入れた再整理がなされた。大きな提案項目とされた地域地区区分をみても、こうした議論·修正作業を通じて、緑地地域と無指定地域の設定による計画的な市街地誘導、新市街地と旧市街地を分けることによる用途区分の適正化、特別用途地域による多様性のある地域の創出、これに加えて、景観·高度地区·防火地区の設定がまとめられるに至っており、当時の建築·都市計画の計画理論に立脚した、市街地整備を目指す区分として建築法規内に結実したと評価できる。一方、委員会では法として基準を示す場合に最低限の指針として設定すべきとの基本認識が共有された。こうした議論を経て、建築法要綱試案の形態規制においてみられた理想的な基準は、現実的な基準へと修正が加えられる。他方、単体規定においては特定の基準のみを法規内に記述するにとどめたことを鑑みれば、これら規制基準の法規的位置付け、具体的な規制内容には、検討の余地があったものと理解すべきであろう。今後の研究課題としては、建築基準法制定にむけた検討段階の解明と本研究が示した建築法草案検討時の議論との関係性を考察すること。当時、建築法草案と平行して検討されていたとされる都市計画法の改正過程の解明などが挙げられる。%This paper analyzed expertise of key figures for outline of building law made by War Damage Reconstruction Institute after the World War Ⅱ. The results are given follows; 1) Key figures recognized this law have advantage proposition correlate well with urban planning. 2) Revised law based on key figure opinions was added title of "Project of Fireproof Building" and "Scenery" 3) In the deliberation process, an indistinct point about regulation contents was left.