中国東北部における満族民居の構法、採暖法及び平面構成の発展過程に関する一考察

摘要

中国に居住する少数民族は、現在55集団に及び言語や文化を維持 する権利が保証される一方、近年では住様式の近代化に伴い民族固 有の伝統的民居は姿を消しつつある。中でも満族（満洲族）は狩猟民 としての起源を有し、その後中国を支配するに至る清朝旗人として、 長い年月をかけ居住範囲や住様式を変化させてきた。満族伝統民居 の特徴として「万字炕」、「跨海煙突」、室内装飾要素として の「窩薩庫」等が挙げられる。中でも「万字炕」は、中国東北部 の寒冷地居住の重要な空間要素で、周辺地域に居住する漢族の「炕」 や朝鮮族の「オンドル（温突）」同様、廃熱利用型の暖房システ ムである。ただし、その形状に独自の特徴を有し、南北両側の炕を 煙道により連結し壁面の三方を囲う「コ」字型で「跨海煙突」や「窩薩 庫」の位置も「万字炕」と関連を有す。一方、炕の成立については中国 の金王朝期にその記録が残るとされるが、その発展と普及過程の 検証は不十分である。これは少数民族固有の住空間成立過程に関す る残存資料自体が乏しく、発掘資料の数も限られる事による。また、 現存遺構についても経済発展の著しい中国では、その多くが維持• 保全に課題を有している。特に満族の場合、清朝の成立以降漢族と の同化が進み、現在は満族固有の文化自体が失われつつある。%Based on the archaeological data and literature, this paper aims to clear the evolution of Manchu housing and kang. Sushen and Yilou people lived in a deep hole to resist cold, Wuji and Mohe people lived in semi-underground house, and with the evolution of the Kang Jurchen people began to live on the ground. In Qing Dynasty, the main room of Manchu residence has a change process that the number of room is from two to five. In general, there have a Solon Rod for worshiping heaven and a corn building for preserving grains in courtyard.