武力紛争時における文化遺産に対する意図的な攻撃の処罰に関する研究: トンブクトゥの歴史的な宗教上の建物に対する攻撃についての国際刑事裁判を事例として

摘要

武力紛争時における文化遗産の攻撃、破壊、略奪、軍事利用等は複数の国際条約により禁じられており、各条約の締約国はその遵守の義務を負う。そのような国際的な規則の始まりは1907年に第2回万国平和会議において採択された陸戦の法規慣例に関する条約とその附属規則に遡る。戦争法規を法典化する中で、宗教上の建物や歴史的建造物等への意図的な破壊も禁じられ、違反行為は訴追されるべきと定められた。1954年にはユネスコにおいて、武力紛争の際の文化遺産保護を専らに极ぅ武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(1954年ハーグ条約)が採択された。この条約では、不動産文化財から動産文化財、文化財の所蔵·展示施設、避難施設まで文化財定義を広くとり、その保護と尊重を定めている。1954年ハーグ条約は1999年に同条約第二議定書によって補完され、国際的性質を有さない武力紛争にも保護と尊重の原則は適用されることが明示された。武力紛争法の系譜では、1977年に採択された、武力紛争時に適用される諸規則を定めるジュネーヴ条約第一追加議定書と同第二追加議定書により、国民の文化的または精神的遺産を構成する歴史的建造物、芸術品、および礼拝所の保護が、国際的な武力紛争時と国際的性質を有さない武力紛争時の双方について規定された。これらの国際条約はその違反行為を直接に裁く枠組みはもたないが、締約国には、国内法においてそうした違反行為を定め、処罰できるように制度整備をすることが求められている。