近世期の加賀国における大聖寺藩御蔵所の空間構成に関する研究

摘要

The purpose of this study is to clarify the type of building arrangement and the factors of spatial formation of Okura-syo owned by Daisyoji Domain that was a branch family of Kaga Domain: head family of the Maeda Family. The building arrangement of Okura-syo was formed by technique of spatial design that was different from Kaga Domain. For this reason, we categorized the Daisyoji-Okura-syo as Daisyoji-han type. The factor of spatial formation was the spatial consciousness called the centrality.%大聖寺藩は、寛永16年（1639)、加賀藩主前田光高の弟利治が分家して成立した。幕末においては10万石の外様大名である。その領地は加賀国の一部であるが、越前国の福井藩領に接しており、本藩にとり防衛上重要な位置にあった(Fig.l)。支藩の大聖寺藩もまた本藩同様、領内に御蔵所を設けて年貢米を徴収した。「秘要雑集」によれば、御蔵所は城下の永町、大聖寺川河口における北前船の拠点の瀬越、山中、串の4ケ所~(注1))であった。天明6年（1786)、大聖寺藩は、蔵宿を廃し、翌年に「給知蔵」と呼ばれる給人米を収納する蔵所を永町御蔵所に併設した~(注2))(Fig.2)。天保10年（1839)、大聖寺藩は、城下の荒町において救荒のための籾を納める蔵所の建設に着手した~(注3))。大聖寺藩も財政のため廻米を行ったが、瀬越御蔵所が起点となった。この御蔵所と永町御蔵所とは大聖寺川水運で結ばれていた。瀬越御蔵所は、「向蔵」、「横蔵」と呼ばれる2棟の小規模な御蔵のみであった~(注4))。なお、見取図等の絵図史料はなくその実態は明らかでない。山中御蔵所は、「筑紫屋古図」~(注5))に描かれているが、「御米土蔵」が1棟のみである~(注6))。串御蔵所は、安永4年(1775)以後中絶し、文化13年（1816)以後は商人の蔵を用いていた~(注7))。このように藩政後期の大聖寺藩においては、城下に設けられた永町御蔵所のみが御蔵所としての体を成していたと考えられる。