実測調査に基づく同潤会三ノ輪アパートメントの計画手法

摘要

同潤会アパートの中で，三ノ輪アパートはあまり注目されてこな かった。それを歴史の中から拾い出し光をあてた調査である。失われ つつある近代建築について，詳細な資料と記録を残すことは，今日求 められる重要な作業であり，筆者らのグループがそれを地道に進めて いることに敬意を表したい。貴重な資料・記録である。 なお，動線分析が添付されているが，現時点では導入の域を出ない。 本格的に研究するならば，当時のゴミ収集人の階層（部落を含む）は 何で，中流階級から隔離するものとされていたのかどうか。スラム改 良であった猿江は動線分離が弱いが，階層認識と関係があるのかどう か。紳民・救貧対策を掲げていた同潤会内部で議論はあったのか。そ れともゴミ収集の生業上の意味や階層論は無関係で，単に中庭型計画 の裏返しにすぎないのか。それらの検討があって初めて意味をもつ内 容であろう。今後に期待したい。%The purpose of this paper is to report the survey of the Doujun-kwai Minowa Apartments and elucidate the planning method of it. By the survey, We figured out the actual condition and found out the design change of the deep well and the stairs. It was designed appropriately for the site. Design of the elevation was put highest priority on the scenery seen from the road in front of the apartments and the court.