伝統木造寺院・東本願寺御影堂における地震観測記録の分析とシミュレーション

摘要

This paper describes analysis of observed seismic records and their simulation using a 3-D frame model for the traditional wooden temple, Higashi-Honganji Goeidou. From the records, the first predominant frequency decreases with increase of deformation. The seismic response of the top is much greater than that of the bottom. The response of west side is about half of the east side, due to the mud walls. The 3-D frame model was configured on the basis of the results of investigation and shaking table tests. The simulation results show good agreement with the records.%日本における強震観測は50年以上の歴史を有し，当初より建築物はその重要な対象であったはずだが，観測事例は未だにとても十分とはいえない。筆者らが指摘するように，伝統的木造建築物の観測事例に至っては，極めて稀と言わざるを得ない。本報告は，東本願寺御影堂における多点地震観測記録を用い，大規模木造建築物の振動性状を詳細に検討したもので，極めて貴重な成果である。このような建築物では，使用している材料や部材，接合方法により，その地寮応答に強い非線形性を示すことが想像され，非線形性の程度を定量的に評価し，3次元フレームモデルを用いたシミュレーションによって，妥当な説明を加えている意義は大きい。耐震改修工事後も観測が継続されているかどうかは記述されていないが，更に記録が蓄積されて耐震改修の効果の検証が行われ，類似の事例の先駆となることを期待する。