空き家を含む京都の町屋長屋の構造調査

摘要

京町家のニ軒長屋を対象に，常時微動の実測や構造調査等を行い，耐震性能評価法の検証と考察を行った論文である。降伏ベースシア係数と微動特性を用いた評価法はかねて筆者らの提案するところのもので，京町家に特に適合性が高いとされ，本論2例の長屋でも同様の結果が提出されている。 二軒長屋における建物の一体性に着目し，実測データを基にその構造特性を検証した点，さらに，伝統的構法において架構の特徴に応じた性能評価方法の必要性を指摘した点は重要である。長屋全体と各住戸単体に対する評価の比較は本論の中核であるが，その部分を読む限り，算定条件にはやや疑問が残る。 提出された問題意識を逆手にとれば，隣接する空き家を補強し，長屋全体の性能向上を図るなどの提案が可能で，住み続けながらの補強，町並み保存への貢献も期待できる。建物一体性の観点は，在来木造住宅の増改築·減築にとっても重要で，今後幅広く展開できるテーマとなろう。%This paper describes the results of the structural survey on wooden traditional row houses in Kyoto including vacant houses. Through the investigation, the structural features including the seismic performance of the row houses were revealed. We analyzed the influence when only one house of the same row house was demolished or reinforced. Finally, we investigated the differences in transition of temperature and humidity between the occupied house and the vacant house of the same row house.