日本食品衛生学会創立60周年を迎えて食品衛生法に基づく食品中残留農薬基準の変遷

摘要

1945年8月に終戦を迎え.荒廃した環境の中.人の往来が活発となり，海外からの復員などもあって，食中毒や伝染病の蔓延が見られたとされる.1950年前後には，黄変米事件，原爆マグロ事件，ヒ素ミルク事件，水俣病の発生などが起こり.食品衛生に関わる事象に社会の関心が高まった.ヒ素ミルク事件では，粉ミルクの製造時に使用していた第二リン酸ソーダ(乳質安定剤)に含まれていたヒ素が原因と判明したことから，食品添加物の安全性確保が重要な課題とされ，1960年3月15日に，食品添加物の成分規格.製造基準，品質確保の方法等を収載した「第一版食品添加物公定書」が公表された.食の安全確保が求められる中.日本食品衛生学会はその1週間後の同年3月23日に設立された.